ペティちゃんに手を引かれるようにして、私は10年ぶりにふるさとへと向かう電車に揺られていました。 何度も心臓が口から飛び出しそうになる私を、ペティちゃんは笑いながらはげましてくれました。 私のふるさとはここから電車で5時間ほど西にある、さびれた…

こんにちは。お元気にされていますか。 今日はこの街にやってきて、はじめての日曜日です。 わたしは地下鉄に乗って、天神にやってきました。地下街でクッションカバーと絵の具を買ってから、（友達もいないし、ひとりで絵を書こうと思っています）街で一番…

ずっと頑なに手を離せずにいたファントムに私が別れを告げたのは、あなたに出会う少し前のことでした。 彼は古くからの友人でした。私は彼のことを心から愛していました。 ファントムは私にいつも温かい幻想を見せてくれました。 彼が作り出す幻の中で、私は…

夕暮れがはじまっていた。私たちは橋の途中で車を停め、喪服のジャケットを脱いでから車を降りた。骨壷を手のひらにのせて、深い深いエレベーターを君と二人で降りていく。そこは小さな島だった。海までの道を手を繋いで歩いた。下から橋を見上げると、緑の…